協会誌「大地」No48

東北地質調査業協会 事務局 本郷 ちえ子

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さく井協会・斜面協会・東北地質調査業協会三協会の統合により、10月から、週4日勤務しておりますのでよろしくお願いいたします。

私の今一番の関心事を書くことで自分自身の紹介となれば幸いです。

クルミは2歳の春に私のところへやってきました。友人の知人に事情があり、どうしても犬をこのまま育てられなくなったので、良かったら引き取って育ててくれないかと話があったそうです。かねてから犬の里親になりたいと思っていた私は、それではということで会いに行ってみました。なんでもその家で飼っていた猫の名前がミルク。そして犬の名前がクルミということでした。畑の真ん中のまるで破れ傘のようなビニールハウスの中にポツンと座っていた彼女は私を見るなりさっさとお腹を見せて服従しました。生まれたばかりの時に引き取られたようで、遊びも吠え方も何も知らないままのそれこそ鎖の長さだけの世界しか知らないような埃だらけの犬でした。それから一週間、友人に連れられてきた彼女を見た母はただ一言。「おまえ、狐をもらってきたのかい」・・・

雨の日も風の日も一緒に歩くこと3年、いつの間にか彼女は私の話相手になっていました。

愚痴を言ってもただ黙って聞いてくれるような気がするから不思議です。この「女性からのひとこと」東北地質調査業協会 事務局本郷 ちえ子頃は、遅く帰れば諌めるような眼で私を出迎え、つまづけば速く歩けとばかりに振り向いて待っています。犬と歩いていると知らない人とでも挨拶ができるようになったり、特に犬を連れて散歩している人とは共通の話題というか、飼い主が挨拶をしている分犬たちも自然に仲良しになっているようです。夕方ともなれば我が家界隈はさしづめ犬の散歩銀座で、いろいろな犬種といろいろな飼い主がすれ違い、見ているとなかなか面白いものです。うちの彼女は他の犬を吠えたり、かんだりはしないのでどこへ連れていっても安心ですが、小さい犬ほど吠えるのがうるさいようで、すれ違いざまに自分の犬を抱き上げている男性には思わず苦笑してしまいます。また、犬の名前にも時代を感じます。私が子供のころは犬の名前と言えば大部分がポチとコロだったように記憶していますが、今、うちの彼女の友達の名前と言えばももちゃん・ゆきちゃん・ともちゃん・・・・まるで人並です。皆、嫁いだ娘さんの名前だそうです。こうして私自身、地域の人達とも結構コミュニケーションが取れるようになったことは犬のおかげかもしれません。以前のように9時から5時までの職場と我が家を折り返すだけの生活ではこんな生活はあり得なかったと思います。

そして楽しみのもうひとつは、犬の散歩仲間との花の話題。一人暮らしの叔母から引き受けたカトレアの花の派手さと香りに惹かれて休日ごとにホームセンター・園芸センターに通い詰め、カトレアの処分品を集めること2年、そして友人と花木の交換で頂いた胡蝶蘭等50鉢を優に超え、収納場所も無く、また、築30数年の寒風吹きぬけるせまい我が家にワーディアンケースなど置けるはずもなく、簡易なビニールの温室に暖をとっているだけですが、天気予報をチェックしながら毎朝夕に温度と湿度を見ておくだけで一鉢も枯れることなく四季おりおりに長く花を咲かせてくれます。生まれ故郷の環境を考えればカトレアも胡蝶蘭も丈夫なものかもしれません。他の花とは咲いた時の感動が違うような気がします。特にカトレアのシースの中の蕾がゆっくりと透けて見えるようになった時はまさに私の至福のひとときです。以前は、山野草の生い茂る日陰の庭が好きで友人達からもらった草木を植えていました。特に梅雨のはしりのころの緑の競演は本当にすばらしく、緑色にこれだけの種類があるのかと思うくらいです。絵心があれば日がな一日水彩画を描くのもいいかもしれません。ところが、ある梅雨の晴れ間のムッとするような午後、黒っぽい長い珍客が庭に迷い込んで来たのを見て犬も私も震え上がってしまい、それ以来、庭に日蔭はあまりつくらないようにしました。

今では、日向ぼっこをしながら置き物のようにじっと通りを見ている彼女の頭を撫でに近所のひとから通りすがりの小学生まで1日に一度は誰かれなく顔をだしてくれます。老母一人を置いて外に出る身としてはこれがまたとてもありがたいことです。

とりとめのないことを長々と書いてきましたが、たかが犬だけでこれだけの生活の幅がひろがったわけですから彼女には感謝しています。もう少し時間ができたらもう一頭ないし2頭、体力の続く限りは里親になりたいと思っています。もっとも母にはひんしゅくをかいますが。

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