協会誌「大地」No46

67.産業廃棄物であるカキ殻の土木材としての特性

(株)菊池技研コンサルタント 久保田 光喜・鈴木 真理・高橋 司

1. はじめに

岩手県では年間約1万トンのカキ殻が生産され、そのほとんどが産業廃棄物として野積みされており、有効なリサイクル方法の確立が急がれている。
本試験は、カキ殻材を活用するにあたり、カキ殻の土木材料としての特性を把握することを目的として実施したものである。
試験は一般の土質材料試験を適用し、締固め特性、CBR値および透水性、細粒化の程度を確認した。

2. カキ殻材の特性

試験に用いたカキ殻は、野積みされている一般的なものを使用した。締固め試験はJIS規格で定められたB-b法を採用した。締固め特性およびCBR、透水性の把握のため、突固め回数を変化させて試験した。回数は修正CBR試験、設計CBR試験を準用し、17回、42回、67回、92回の4種類とした。

(1)締固め特性

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図-1締固め試験結果

1.室内試験結果
カキ殻材の締固め密度は、図-1に示すように、乾燥密度ρd=1.03〜1.06(g/cm3)の範囲でばらつき、曲線は一般土砂で示すような凸型を示さない。しかし、そのばらつきは3%程度と小さいため、同じ締固めエネルギーでは含水比に関係なくほぼ一定の密度が得られるということが言える。最大乾燥密度γd=1.06(g/cm3)、管理基準は路体並み密度ρ80=0.90(g/cm3)、路床並み密度ρ85=0.95(g/cm3)である。

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表-1現場密度試験結果

2.現場密度特性
現場での転圧は、重機(バックホー12t)で行った。密度試験は砂置換法で行った。密度は表-2に示すように転圧の回数が増えるほど乾燥密度が高くなる。締固まり度は1回転圧で管理基準(最大乾燥密度1.06の90(%)程度)γd=1.0(g/cm3)に締固まり、路床に十分な90(%)以上の密度が得られ、締固まり易い材料である

(2)粒度特性

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図-2カキ殻材の粉砕状況

カキ殻材は脆く締固めに伴なって粉砕されて細粒化するため、粒度変化の状況を確認した。
試験対象とした試料は、突固め用ランマーで粉砕した。試験結果は図-2のとおりである。細粒化の状態は、
1.平均粒径D50を基準した変化20(mm) →10(mm) →5(mm) →4(mm)→2(mm)
2.粒径10(mm) を基準とした変化25(%) →45 (%) →65(%) →70(%) →80(%)となっており、突固め回数が増えるごとに細粒化している。

(2)締固め密度とCBR、透水係数の関係

図-3に示すように、密度およびCBR値は突固めの回数が増えるほど高い値を示す。
透水係数は、突固め回数が多くなるほど(密度が高くなるほど)透水性は悪くなっていくが、k=1×10−2〜10−4と良好な透水性を示す。

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図-3密度とCBR、透水係数

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表-2現場転圧回数と密度、CBRの関係(目安)

(3)現場施工の概略値

試験結果から、重機(バックホー12t)転圧を行ったときの密度等の概略値を表-2に示す。

3. 土木材としての適応性

1.盛土材
少ない転圧回数でも高い密度に締固まり、強度もでやすいため良質な材料であるといえる。また、単位体積重量は、γ=1.4(g/cm3)(締固め度100%のとき)と軽く、軽量盛土として有効である。

2.路盤材
CBR値は数回の転圧で20(%)以上と硬く、クラッシャーランの代用が可能である。また、透水性が良いため凍上抑制層としても有効である。しかし、細粒化するため表層部に敷き詰めたまま(敷き砂利の代用)では、
T.表層の細粒化が進み強度が低下する ため、わだち掘れや窪みが発生し走行性が悪くなる。
U.雨水や車両による泥の流入や持込で表層部の汚れや泥濘化する。また、草類が繁茂するため走行性や景観が悪化する。
V.表層部が泥質化することによって透水性が悪くなり水溜りとなる。
したがって、トラフィカビリティの改善など短期的改善や道路盛土材や路盤材として長期的に使用する場合には、舗装をするなど表層を覆う必要がある。

3.土壌改良材
軟弱な土砂にカキ殻材を混合し、改良材として用いる。また、表層部に敷き詰める(敷き砂利の代用)ことによって、重機やダンプトラックの走行性(トラフィカビリティ)の改善が可能である。ただし、施工後の地耐力の確認を原位置で平板載荷試験を行って確認する必要がある。サンドマットに求められる透水性は、透水係数k≧1×10-3(cm/s)でありカキ殻材では重機転圧5回以下(バックホー12tでの目安)で得られる。

4.フィルター材として使用
カキ殻は、転圧の程度によって礫材〜砂質土と同等の透水性(k≧1×10-4(cm/s)) を有するため湧水対策用のフィルター材や暗渠の代用として使用できる。

5.舗装材料として使用
カキ殻は透水性が高いため排水性がよく、透水舗装で求められる透水係数(k≧1×10-2(cm/s)) を確保できる。そのため、透水性舗装の代用として有効である。ただし、細粒化するため、一般車両の駐車場や歩道、散策道など細粒化の進まない場所に適している。

4. 今後の課題

今回の調査では細粒化の状況、締固め特性と密度およびCBR値を把握することができた。今後の課題として以下が挙げられる。

1.盛土材として使用した場合の長期圧縮性
盛土材(路体や路床、サンドマットなど)として使用した場合、長期間の荷重に対しての圧縮の程度が問題となる。このため、盛土に使用した箇所の長期の沈下観測を実施する必要がある。

2.材料としての劣化度
長期間放置されるカキ殻材の劣化による強度低下や舗装材として利用した材料の劣化による変状、盛土材として利用した場合の劣化による盛土の沈下などの問題がある。このため、スレーキング試験などの浸潤・乾燥繰り返し試験などを実施する必要がある。

《引用・参考文献》
1)地盤工学会編:土質試験の方法と解説、2000.3
2)地盤工学会編:地盤調査法、1995.9

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