83.オランダ式二重管コーン貫入試験を用いた地盤定数設定に関する一考察

(株)復建技術コンサルタント  千葉 太介・佐藤 信宏・市川 健

1.はじめに

 一般に、沖積粘性土地盤の粘着力Cの推定に際しては、「N値(標準貫入試験)」、「室内土質試験」および「各種サウンディング試験」等により推定されることが多い。
 特にN値<4の軟らかい粘性土に対しては、N値による推定に問題があることが報告されている1)。  今回、東北地方を代表とする宮城県石巻地方の沖積平野を例として、これまでに実施された調査データを基に、主にN値、一軸圧縮強度qu、オランダ式二重管コーン貫入試験によるコーン指数qcに着目し、各推定方法の比較検討を行った。特に、コーン指数qcと一軸圧縮強度quに特徴的な傾向が認められたので報告する。


2.調査地の概要

 宮城県石巻地方に広がる石巻平野は、岩手県北部に端を発した北上川が太平洋に流れこむ合流付近に発達した沖積平野であり2)、含水比60〜100%を示すN値0〜4程度の粘性土が広範囲に厚く(最大で70mにも達する)堆積しているのが特徴である(図-1)。

宮城県石巻地方の概略的な地形区分図
図-1 宮城県石巻地方の概略的な地形区分図


3.オランダ式二重管コーン貫入試験

 図-2にオランダ式二重管コーン貫入試験の略図を示す。地盤に貫入させるロッドは、先端にコーンが付いた内管とそれを覆う外管との二重管構造となっており、図-3に示すようにロッド側面に作用するフリクションの影響を受けずに、深さ方向に連続した貫入抵抗が測定できるのが大きな特徴である。また、その他としては、「操作が容易かつ単純で個人誤差が少ない」、「深さ方向の適用限界は40m(経験値)」、「quとの相関があるqu=(1/10〜1/15)qc3)」等が挙げられる。なお、標準貫入試験および一軸圧縮試験方法は一般的に良く知られているので、ここでの説明は割愛し、他の文献を参照されたい。

オランダ式二重管コーン貫入試験 略図
図-2 オランダ式二重管コーン貫入試験 略図

貫入先端部4)
図-3 貫入先端部4)
貫入及び測定方法4)
図-4 貫入及び測定方法4)



4.粘性土の地盤強度の推定手法

 粘性土の地盤強度(粘着力C)の推定には、一般に次の3つの方法がある。

【1】室内土質試験による方法
一軸圧縮試験、三軸圧縮試験等

【2】N値による方法
qu=12.5N(kN/m2)・・・(式-1)5)

【3】サウンディングによる方法
qu=(1/10〜1/15)qc・・・(式-2)3)これらのうち【1】による推定が最も望ましいと考えられるが、経済的、時間的制約から、【2】による推定が多く用いられる傾向にある。


5.石巻地方における各推定法の比較

5.1quとN値
 図-5に本地域におけるquと式-1によるN値からの推定値との関係を示す。この図より、一軸圧縮試験でのqu値に対し、N値よる推定値は過小な値を示すことが認められる。特にN=0(自沈)の場合は、N値による推定値が0となり、問題である。

5.2quとqc
 quとqcの関係について示したのが図-6である。同図では、砂分含有率ならびに、深度との概略的な関係についても示している。この図より以下の特徴が認められる。


quとN値(推定値)の関係
図-5 quとN値(推定値)の関係


本地域におけるqc-qu相関図
図-6 本地域におけるqc-qu相関図


quとqc(推定値)の関係
図-7 quとqc(推定値)の関係


【1】quとqcの関係は概ね式-2の範囲もしくはそれ以上の値を示し、深度に関わらず平均「qu=0.097qc(≒1/10qc)」の関係が得られた。

【2】砂分含有率に着目すると砂分≧15%では「qu=0.081qc(≒1/12qc)」とやや低下傾向にある。
図-7には本地域で確認された「qu≒1/10qc」とした場合のquとqcからの推定値の関係を示した。この図よりquとqcは良好な関係があることが認められる。


6.まとめ

 本論においては石巻地方の特徴として以下のことが認められた。
【1】N値とquの関係について整理した結果、N値からの推定は強度を過少評価してしまう傾向にある。

【2】quとqcの関係について深さ方向によらず、一般的な関係(式-2)の上限値に近似する値を示す。
オランダ式二重管コーン貫入試験の特徴と地盤構成ならびにN値等の評価を行うことで、サウンディングを地盤構成の補完のみならず、地盤定数の設定に用いる有効性が確認された。このことは、本地域の効率的な設計に貢献できると考える。


7.おわりに

 現行の設計は依然N値に頼った地盤定数を用いる傾向が強いと思われる。標準貫入試験は全ての地盤に万能ではなく、N値により推定した強度はときに真の地盤強度をとらえていない場合がある。今後は性能設計に移行していくにあたり、精度の高い地盤定数を得るために、より効率的な調査を実施していくことが重要と考えられる。
 現況で得ることのできる数少ないデータをより有効的に活用し、今後も地盤定数の設定手法について考察していきたい。


《引用・参考文献》

1)日本道路協会:道路橋示方書・同解説W下部構造編、2002.3

2)伊藤ら:「北上川低値における沖積層の堆積環境および堆積年代について」第36回地盤工学研究発表会論文集、2001.6

3)日本道路協会:道路土工軟弱地盤対策工指針、1985.11

4)地盤工学会:ジオテクノート11地盤を探る、2000,11

5)地盤工学会:地盤調査の方法と解説、2004,6
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