広報委員会   佐藤 道子/庄司 夕里絵

27.道具でわかる地質調査入門(第2回)

み: みなさんこんにちは 今回は「踏査」に使うハンマーとクリノメーターという道具です。技術委員会の方に解説していただきましたが、もう少し地質屋の方にお話をお聞きしてみようと思います(地質屋と言わないとヘソを曲げるって会社の人が言っていたからなあ)
   
ゆ: こんにちは〜 ベテラン地質屋のAさんと中堅現役ばりばりのBさんに来ていただきました。早速ですが、この道具は地質屋さんはみんなもっているのですか?
   
地質屋B: ダム関係者と踏査をやる人以外はほとんど使いませんから、会社の技術者の半分も持っていないのじゃないかな。僕は使うときだけ会社のを借りています。
   
地質屋A: (いきなりむっとして)地質屋たるもの現場に行くときにはハンマーを腰にぶら下げていないとバランスがとれないだろうが。それにハンマーはともかくクリノメーターは学生時代にバイト代をためて買うか、初任給で買うかしたもんだ。結構高いんだぞ。
   
ゆ: え〜っ!ハンマーって腰にぶら下げて歩くんですか?大工さんみたく?
   
地質屋B: 僕は藪こぎの時になくすと困るので調査鞄に入れて歩きますが・・・
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み: 調査鞄ってたまに会社で見かける変な鞄ですか?
   
地質屋A: 見かけは悪いがあれはポケットがいっぱい着いていてすごく便利なんだ。学生時代は買えなくて先輩が持っているのがうらやましかった。
   
ゆ: (昔の話が好きだな)藪こぎって何ですか?
   
地質屋B: 山を歩くといっても道がない場合もあるので、そういうところは藪(草や木が生い茂って道がないところ、念のため)をかき分けて歩くわけです。その格好がなんかこいで進んでいくみたいに見えるので藪こぎっていうらしいです。
   
ゆ: 平泳ぎみたいにですか(両手でこいでみる)
   
地質屋A: (冷ややかに眺めつつ)もっと力強くこがないと藪に跳ね返されてしまう。
まあ、藪こぎぐらい何でもない。沢の中でつるつるの壁をへつるほうがもっと大変だ。
   
地質屋B: 確かにそういうところではロープとかを使えるチームで歩かないと危険な場合もありますね。とにかく、その時にしか行けない露頭とかがあるので踏査の時にはデータ取りを特に念入りにする必要があります。
   
み: 露頭って岩が出ているところですか?
   
地質屋A: 切り通しみたいにきれいに岩が出ているところばかりだったら踏査も楽だが、藪に隠れた重要な露頭をちゃんと見つけて記載(地質の記録のこと)できるかが地質屋の腕だ。
   
み: (苦労するほど偉いみたいな話が多いな)ハンマーですがあれは何のために石を割るのですか?
   
地質屋B: フレッシュな岩石本来の面を出して観察するためです。それから隠れた部分を露出させたり、サンプル(分析や比較に使う)を持ち帰る位の適当な大きさにするのにも使います。
   
ゆ: 別に持ってかえって庭に飾るわけではないのですね。じゃあ試しに石を割ってみます・・
エイ!(あれ、割れないな)
エイッ!(あれ、割れないぞ?!)このやろ〜!(写真)
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地質屋A: 石を割るのにもこつがあって、やたら叩けばいいものでもない。ほれこのとおり。(簡単に割れる)
   
み: (へえ〜うまいもんだな)踏査はどんな現場でも必要ですか?
   
地質屋A: 歩けば見えないものも見えてくる。まずフィールドをうろついて悩むこと。
   
地質屋B: ボーリングとかはボアホールTVとかをやらない限りは点のデータなのでそれを面として表現するためには露頭データによる補完が必要になります。地表踏査は三次元的なデータ把握が必須となる斜面調査やダム、トンネルとかの調査では無くてはならないものだと思います。
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写真   注)ガードレールで測ると実際には金属の帯磁の影響で正確に測定できません。
み: げすな質問ですが、こんな単純な道具だけで仕事になる踏査って儲かるのでは?
   
ゆ: (藪こぎなんか儲かってもやりたくないなあ)
   
地質屋B: 春は山菜、秋はキノコと余録も多いですけど、あんまり儲からないようですみ、ゆ:(きっとAさんみたいな人件費の高い人がキノコ取りとかばっかりやって予算を食いつぶすからに違いない)儲からなくてもやるんですか?
   
地質屋A: 苦労が多くて儲からなくても、踏査は地質調査の古典だ。今度連れて行ってやろう。
   
はっ?はあ・・(やなこったい!行くならBさんとにする)
   
地質屋B: 地質調査の成果が正しいかどうかは、施工時に地面を掘れば明らかになります。その時に発注者に呼ばれて恥をかきたくなければ、歩くしかないと言う感じです。
   
地質屋A: 後でいろいろ悩むよりは、現場にいるときに苦労してでも歩いておいた方が結局はスムースに仕事を進められる。それがわかってこそ地質屋だな。
   
良い成果には見えないところでいろいろ手がかかっているのですね。今日はどうもありがとうございました。
   
ありがとうございました〜(今度は石割るぞ〜)
   
地質屋A: じゃいっぱい行くか
   
地質屋B: いいですねぇ〜
   
(地質屋はすぐ呑むなあ、と思いつつも)わ〜い、宴会だあ〜ご相伴、ご相伴!(ご一同、飲み屋探しにクリノメータを駆使しつつとことん呑みあかしたのでした。)
ハンマーとクリノメーター (東北地質調査業協会 技術委員会)

 地質調査の最も基本として位置付けられるもののひとつに「地表地質踏査」があります。文字通り地表を自らの『足』で歩き、地表で確認できる地学現象を調べます。その対象は、地形図では見られないような微地形であったり、地表で観察される地質であったり、あるいは湧泉(湧水のみられる箇所)であったりとその目的により様々です。地表地質踏査は、山に分け入り、地層が露出している箇所(露頭)を探し、そしてわずかに露出した部分からより多くの情報を集め細かく記載します。それは、岩石の種類や割れ目の状態、硬さや風化の程度、周囲との連続性等です。道具としては、露頭の岩石を割ったり地層を削ったりするためのハンマーと、地層面や割れ目の方向(走向)と傾斜を測るためのクリノメーターが必需品です。

 地質調査用ハンマーには、「写真1」のように大きく分けて2つの種類があります。先端が尖っているピックハンマーと平たいチゼルハンマーです。露頭の岩石は新鮮な面を観察してみなければ、それが何かわかりません。このときにハンマーを使います。ハンマーの先端部は軟らかい地層を削るときに使います。岩石を割って何を見るかというと、岩石を構成している粒を見ます。すなわち、粒度と組織、粒の形と種類などを観察します。観察すべき露頭の部分に近づき、叩いて岩石が取れるところを探します。また、ハンマーで岩石を叩いたときの感触は、露出する岩石の硬さを体感でき、地域に分布する地層や岩石の硬軟の概略判断する目安となります。

 クリノメーターは、「写真2」に示すような形で、方位を示す磁針部分と傾斜を測る部分、水平を保持するための水準器で構成されています。地層の伸びの方向(走向)や傾斜は、地層を一枚の板と考え、「図1」のように測ります。クリノメーターの磁針部分は「EとWが反対に表示」されています。これは、計測した面の方向を読み取りやすいようにしているためです。


写真   写真
写真1   写真2


 測る時に注意することは、測ろうとする面が地層の層理面かどうかということです。

 露頭では岩の割れ目などでいろいろな方向の面が見えます。層理面は、ある地層と別の地層との境界ですから、きちんとその面を確認してください。また、計測する面はクリノメーターを当てられるように、広い面をハンマーなどでだしてください。

1)地層の層理面をだしたら、そこにクリノメーターの長辺(EまたはW側)を当てます。そして、水準器で水平を保ち、磁針を安定させます。磁針が止まったら、磁針のどちらでも北に近い方から外側の方位角度目盛りを使って、方向値を読みます。

 図1の例に従えば、磁針がクリノメーターのEの方によっているので、「N30゚E:北から30゚東の方向」ということになります。地層が褶曲していたり、断層で切られていたりしない限り、この方向の同じ高さの場所であれば、どこでも同じ地層を見ることができます。

2)次に地層の傾斜は、走向を測ったときのクリノメーターと層理面の接線に、垂直になるようにクリノメーターの長辺を横におきます。傾斜計の針が止まってから、今度は内側の角度(傾斜計用)を読みます。例えば図1で「50゜」となります。傾斜の角度はこのようにしてわかりますが、傾斜の方向はわかりません。

3)傾斜の方向とは地層の傾いている方向です。傾斜を測ったときのクリノメーターの長辺方向にクリノメーターを向けて方向をだします。図1では磁針は北と西のあいだにありますから、NWをつけて「50゜NW:北西に50゜傾く」となります。

 測ったデータは、地質図作成の基礎データとなるとともに、不連続面データとして斜面安定評価等に使用します。特に、切土の計画では対象斜面が「流れ盤」あるいは「受け盤」の判断をする重要な基礎データとなります。
(文責:技術委員会 新沼正彦:(株)菊池技研コンサルタント)

写真
図1
 
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