68.フローメーター検層の実施事例(地下水流動面の推定)

大成基礎設計(株)東北支社 渡辺 平太郎・山田 紀之

1.はじめに

 岩手県某市において、道路改築工事に伴う切土(15〜20m)によって、周辺井戸への影響が生じる可能性があることから、降水量および沢の流量並びに井戸水位を調査し、工事による影響を解析した。この業務の中で、地下水流速流向測定を実施するにあたり、地下水の流動域を確認する手法として、フローメーター検層(電磁流量計式)および地下水検層(伝導度計KCM- 200B,ゾンデGWL- P)を行った。同じ観測孔内(既設井戸)において、フローメーター検層および地下水検層を実施した結果、推定される流動層は見事に一致した。さらに、フローメーター検層では、より詳細な地下水状況を推察することが可能であった。

2.検層実施孔周辺の地盤および地下水状況

 図1に調査地付近の地下水の概況と検層の実施位置を示す。また、図1には切土計画ラインも併せて示した。各検層実施孔の条件や、地盤地下水状況は概ね以下のような状況であった。

・各検層を実施した観測孔は、既設井戸(VP100)であり、深度は20mである。そのうち、ストレーナー区間はGL- 4〜16mである。
・調査地周辺の地層構成は、上部3m程度が崖錐堆積物で、以深マサ(風化花崗岩)となっている。
・井戸周辺の地下水位は、概ねGL−2〜3mである。

図1 地下水の概況と検層実施位置
図1 地下水の概況と検層実施位置

3.検層結果

 図2には、フローメーター検層結果と地下水検層結果を併せて示す。なお、フローメーター検層は自然状態と注入法の2 回実施した。

 図2に示すとおり、いずれの検層結果でも、GL−7.5 〜8.0m間に地下水流動面が認められ、双方の結果は見事に一致している。また、フローメーター検層では、自然状態・注入法の両方で明確な変化点となって表れている。

図2 フローメーター検層結果と地下水検層結果
図2 フローメーター検層結果と地下水検層結果

4.フローメーター検層結果による推察

 フローメーター検層結果より、GL-9.00〜12.00m間で、自然状態で下降流が序々に大きくなっていること、注入法においては下降流が逆に序々に減少していることから、地下水の微少な流動面の存在も推察される。これは、今回の地下水検層でも、その可能性を指摘できるが、塩分の下降の影響が出る場合もあり、その場合には評価が難しいと考える。

5.未固結地盤へのフローメーター検層適用の可能性

 前記のように、フローメーター検層は目的によって、非常に有効な検層方法となる可能性を示していると考える。フローメーター検層は、これまでに岩盤中の裸孔で実施した例は多いが、既設井戸や未固結地盤での実施事例がまだ少ない。別の業務でも、未固結地盤(砂質土)にVP 管を設置してフローメーター検層を行ったが、この時も地下水流動面は容易に判定することが可能であった。ただし、フローメーター検層はその原理上、掘削孔径等の変化も流量変化となって表れるため、地下水流動面の動きが微少である場合は注意が必要である。地下水流動面の動きが微少と予想される場合、掘削や観測孔仕上げに十分な配慮が必要と考える。

6.終わりに

 地下水流速流向測定結果も含め、周辺井戸への影響を検討した結果、切土工事に伴って周辺井戸の取水量低下および濁水の影響を与える可能性があることがわかった。よって、濁水や水位の監視を行いながら、施工を進めることを提案した。また、地下水流速流向測定深度を決める目的で、フローメーター検層および地下水検層を行ったが、各検層結果から、切土法面途中からの湧水が懸念されることも判明した。切土対象土のマサは浸食しやすいため、対策として法面排水処理(法面での地下排水溝の設置)の提案も行った。
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