24.現場のプロに聞く(土質ボーリングの巻)

日塔 安利氏

プロフィール

1950 年1 月生まれ
山形県東根市出身 血液型 B 型
家族:母、妻、娘
趣味:昔はいろいろやっていたけど、今は仕事に夢中。
(株)半沢ボーリング
常務取締役
日塔 安利氏
今回は、この道30 年という小柄で力持ち・まじめで
仕事の早いと定評のある日塔さんにその極意をお聞きしました。

この仕事をするようになったきっかけは何ですか?


 最初は、横浜の方で梱包関係の仕事をしていたけど、兄姉がボーリングの仕事をしていて手伝ってくれと言われたのがきっかけです。
 昭和48 年からはじめて30 年になります。助手をやっている時から機械をいじって覚えました。当時機械運搬は、かつぐことしかできなかったし、力仕事は苦にならなかった。2 年目にチーフになって、軟弱担当だったのでハンドフィードではじめました。
 人に聞くのがいやで、やっているのを見て覚えるのが好きだね。ボーリング屋さんはお互い話はしないよね、秘密もあるし(笑い)。でも、足場の周りを見ればうまい人かどうかは大体わかるよ。

長年の現場の中で印象に残っていることがあれば教えてください。

 
印象に残っているというか、大変な思いをした思い出は、山梨の大菩薩峠の現場です。大雨になると標高差が1000m 以上あるところの沢水でポンプの水があがらなくなり、その度に一番若かった私が大急ぎでポンプ置き場まで駆け下がるんだけど雷が鳴るととても怖かった。あれは、本当に大変だったね。
 軟弱の仕事では、日本海中部地震の現場でN 値が0 に近い緩い砂でトリプルサンプリングをうまく採れたときは気持ちよかったな。最初からうまく採れてほめられました。

現場作業で気をつけていることは何かありますか?

 サンプリングでも何でも常にそうですが、常に孔内の水圧を一定にしてやるようにしないとコアが乱れます。
 岩掘りの場合は、岩にも裏表があると思う。コアを切る時印を付けておいてコアがねじれて並ばないように気をつけている。見栄えがよければコア観察する人が楽でしょう。

独自で工夫されていることはありますか?

 メタンガスのでるところでは足場を高くしてみたり、コアチューブを回収するときに水をいっぱい差しながら孔内の水圧を一定にすればガスもでてこない。
 ロットは試料採取するのにいいものを使うようにしている。貫入試験がある場合は、どうしてもロットが痛むから。泥水は、山形のものしか使わない。粒子が細かいので粘土になじみ作りやすい。

30 年続けてこられた秘訣は何ですか?

 軟い岩をいかに乱さずに採るか、礫層のコアリングでは、礫層と地山の境目が知りたいと思うので(そのためにボーリングをやるのだから)それをいかにとるかが我々の仕事だと思っている。だからマトリックを乱さず採るよう心懸けている。特に道具を使うわけではなくて、ビット、給圧、送水圧、送水量、泥水をうまくバランスさせれば取れる。ダイヤ使っても取れてるときは傷まないものです。仙台の現場では、礫層の状況がはっきりしていたので、大変工事に役立ったとほめられ、とてもうれしかった。好きだからやっている。泥だらけになるのが苦にならないし、汚れるのを嫌う人はなかなかボーリング屋さんにはなれないと思う。どっちかというと山の現場が好きです。町場の現場は、周囲に気を遣わなければならないから。
 この仕事は出張が多いのでどうしても若い人には嫌われがちですね。
 怒らないように気を使って指導していますけど、2 年くらいやった人に辞められるとつらいですね。私もそろそろ年なので仕事の後継者が大事になりますね。

現場管理者に何か一言お願いします。

 その現場その現場で工程の組み方を考えて欲しいですね。携帯電話があるので連絡は楽になったけど、電話ではわからないことが多いので、技術者は現場にきてちゃんとコアをみて欲しいですね。コア観察は専門家がやるだろうから、日報は地層のことはあまり書かないで掘っている間の情報を書くようにしています。


軟弱ボーリングが得意と言うご紹介でお話をうかがったのですが、最近あまり軟弱の仕事無いからといいながら、実は岩掘りもお得意のようでした。お話が、次から次へとあふれてきてうれしそうにお話ししてくださいました。お話を伺っていて強く印象に残ったのは、非常にまじめで情熱的で丁寧に、一つ一つの仕事をしているということがわかりました。「そうだ、最近では活断層の仕事が面白かったな。取れてればあっちとこっちで曲がりながらコアがつながるもんね。」話が終わって席を立ったときに、いかにも楽しそうに日塔さんは話されました。インタビューしている間中、伝わってきたのはボーリングに対する情熱でした。これからも、ますますお元気でがんばってください。現場の帰りで、お疲れのところ本当にありがとうございました。
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