20.いまさら人に聞けない、素朴ななんでもQ&A コーナー

Q:

地質調査技士の試験問題に、よく低地の地形分類について出ますが、地質上のポイントおよび調査に関する留意点などについてお教えください。
A: 低地に関する問題は、地学一般でよく出題されています。また、この低地を取扱った問題は、先日行われた技術士第二次試験にも出題され、低地(沖積低地)の地形・地質の特徴と建設工学的な問題点、地下水涵養との関連などについて問われています。このQ &A では、紙面の関係で2 回に分けてお答えします。なお、このQ &A を突破口に整理することで各種の資格試験や業務で役立てば幸いです。
低 地は、標高200m 以下で、周辺より低い平野を総称し、沖積低地を主としています。低地地盤は、海水面の変動と密接な関係があり、ウルム氷期(約2 万年前)の海面が下がった際に浸食された地形上に、その後の海面の上昇によって砂泥が堆積して形成されたものです。低地は山麓部から海に至るまでに形成位置によって
T.扇状地部 U.氾濫原もしくは蛇行原部 V.三角州部
 
の3 部分に区分されます(図1 )。 各 地形の特徴は次のとおりです。

 T.扇状地部


扇 状地部は、山地から低地への出口部に位置して、山地から供給された比較的粗粒な土砂が、
洪水流もしくは土石流によって流出・堆積して、一時的に貯留されたところです。つまり繰り返しの氾
濫により形成されたところです。

図1 低地の区分模式図(地盤調査法:地盤工学会より抜粋)

扇 状地部では、主に砂礫層から構成され、N 値も50 以上で土木構造物の支持層や路盤として十分な支持力を持っています。但し、掘削切土が地下水面に達したときには、湧水が発生してのり面崩壊や下流側での地下水障害に注意しなければなりません。また、規模の小さな扇状地(沖積錐)では、豪雨時に突発的な土石流・土砂流が発生する危険性があります。
 
 U.氾濫原もしくは蛇行原部


氾 濫原部は、扇状地部と海岸の三角州との中間部分で、「U- 1 旧河道」、河道から越流した土砂が堆積した「U- 2 自然堤防」、自然堤防の背後に広がり軟弱地盤を構成する「U- 3 後背湿地」、小さな谷の出口部がせき止められ形成された「U- 4 せき止め沼地跡」に分けられます。図2 に沖積平野の地下構造を記し、以下に各地形での特徴を示します。

 U- 1 旧河道


旧 河道は、形成時代によりその地盤構成が異なる。「古い時代に形成された旧河道」は、全て粘性土より構成される場合や、下部が砂礫層よりなり上部が粘性土からなる場合があり、一方、「新しい時代に形成された旧河道」は、砂礫層を主体とし表層部に砂質土が分布します。旧 河道の特徴は、周辺より低い凹地となり排水性が悪く、粘性土が分布する場合、表層部ではN値が0 に近い地盤より構成され支持力不足が問題となり不同沈下も懸念されます。また、低地の中でも凹地形となることから、洪水時には浸水し洪水の主流路となることがあります。

図2 沖積平野地下の構造と地層のいろいろ(地盤調査法:地盤工学会より抜粋)

次回は、氾濫原部の続きから三角州の特徴について記します。
また、海岸部の地形についても追記する予定です。
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